熟成について
先日、発酵醸造科の機材として「熟成庫」を使って熟成肉を実習していると書きましたが、なぜ熟成庫が必要なのかを簡単にお伝えしようと思います。
熟成肉の製法には大きく分けて「ドライエイジングビーフ」と「ウエットエイジングビーフ」の二種類があります。
ドライ=乾燥させてつくるのか
ウェット=保湿したままつくるのか によって違いが出てくるそうです。
熟成と腐敗は非常に似ているメカニズムで、どちらも菌や酵素の力を使って肉(タンパク質)を分解していくのですが、生物界にある様々な腐敗を促す菌の中にごく一部だけ肉のタンパク質を旨味に変える力を持った菌がいて、その菌が活発に働くと肉の熟成が進むというわけなのです。
なにもせず肉を放置しておいたら、当然ですが菌が繁殖して腐敗していくということですね。
しかし、ある特定の条件が満たされた場合のみ、腐敗させる菌が抑えられてタンパク質を旨味に変えてくれる菌が活性化します。
その状態をどうやって作るのかが肉を熟成させるためのポイントになってきます。
その条件とは・・・
「温度」・「湿度」・「空気の流れ」
温度・・・様々な菌(良い菌も悪い菌)も温度が低ければ水分が凍って動けなくなってしまいますし、温度が高ければどの菌も繁殖して腐敗が進んでしまいます。
肉を熟成させてくれる菌が活性化してくれる、ピンポイントの温度帯があるので、そこを利用するのです。
湿度・・・これも適した湿度帯があるのでそこを利用します。
ドライエイジングビーフとウエットエイジングビーフでも湿度帯は変わりますので、熟成庫で調整しながら熟成を促進する湿度を狙います。
空気の流れ・・・空気が滞留してしまうと、肉の表面についた雑菌が繁殖してしまいます。菌は外から付着してくる場合もあるので、肉の周りの空気を動かしてあげることで、悪い菌が肉に付着するのを防ぐのです。
以上のように、肉を腐敗させる菌を抑え、タンパク質を旨味に分解してくれる菌をいかに活性化させるかが、熟成肉をつくるポイントとなります。
微生物たちの動きをコントロールするかによって、熟成にもなりますし、腐敗してしまうこともあるのです。
発酵醸造科では、これらをさらに詳しく学び、安全でおいしい熟成肉を作り上げる技術と知識を体得しているのです。